認知症は高齢者に多い病気です。高齢になると身体機能が低下し、思うように動けなくなることがあります。この状態で認知症を発症すると日常生活に支障をきたし介助が必要になりますが、介護する側の負担も大きくなります。
日常生活に支障をきたす
認知症にはいくつかのタイプがあり、現れる症状もさまざまです。具体的な治療法や予防策はありません。唯一できることは病気の進行を遅らせることです。症状が進行すると日常生活に支障をきたすようになります。生活のあらゆる場面で介助が必要になり、患者本人だけでなく介護する家族や周囲の人にも大きな負担がかかります。
認知症ケアの考え方とは
認知症にはさまざまな症状がありますが、一般的にはもの忘れからはじまります。単なるもの忘れだと捉えられて周囲から理解されず、気づいた時にはだいぶ進行していた、というケースも少なくありません。
認知症ケアで大切なことは人としての尊厳を守ることです。介助が必要になっても、その人の人権が失われたわけではありません。健常者と同じように人権が守られる立場にあるのです。相手の自尊心を傷つけるような言葉をいってはいけません。忘れっぽいから大丈夫だろうと思って話したことも本人の心の中には感情として残っています。傷ついた気持ちがさらに症状を悪化させることもあるので注意が必要です。
尊厳を守るにはどうすればいいのか
では、本人の尊厳を守るためにはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。認知症患者の尊厳を守るためには4つの基本原則を理解し、正しくケアすることが大切です。基本理念については以下にまとめていますので参考にしてください。
1つ目は「心のケア」です。認知症の症状は患者の精神状態に左右されることが多いため、メンタルケアが非常に重要です。異常に思える行動であっても本人なりの考えのもとで行動しています。安易に否定したり、怒鳴ったりして抑圧しないようにしましょう。認知症の症状の1つであることを理解し、本人の気持ちを受け止めるように心がけてください。
2つ目は「関係性の重視」です。わかりやすくいうと患者に関係のある環境を重視する、ということです。認知症患者にとって環境の変化は大きなストレスになります。患者の同意なく無理に環境を変えることはしてはいけません。
3つ目は「継続性と専門性の重要性」です。認知症は進行性の病気です。症状の進行を防ぐための治療を行いますが、精神状態や環境によって状態は変化します。また、症状もさまざまなので継続的かつ専門的なケアが必要です。
4つ目は「権利擁護の必要性」です。これは本人に代わって法的な保護や支援を行うことです。認知機能が低下すると理解力や判断力も低下するため悪徳商法などの被害者になることも少なくありません。本人の権利を守りつつ、本人に代わって法的な保護・支援を行う必要があります。