日本は今、高齢社会を迎えており今後も高齢者の数は増加すると予想されています。それに伴い認知症患者の割合も増えていくと予想されていますが、正しい知識がなければ適切なケアはできません。まずは認知症とはどのような病気なのかを知るところからはじめましょう。
「もの忘れ」とは違う
「認知症とはどのような病気なのか」を正しく理解していますか。認知症は加齢によって起こるものと思っている人も多いかもしれませんが、「もの忘れ」と「認知症」は別物です。人や物の名前を覚えられない「もの忘れ」が脳の老化によって起こるのに対し、認知症は思考や記憶などの認知機能が低下した状態を指し、高齢者に限らず誰もが発症する可能性があります。
ここでは認知症の基礎知識についてまとめていますのでこの機会にぜひ復習してください。
認知症とはどのような病気なのか
認知症は脳の病気や障害によって、記憶や思考などの認知機能が低下した状態のことをいいます。単一の病名を指すわけではありません。認知症には「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」などさまざまな種類があり、このうち「アルツハイマー型認知症」が最も割合が多く、「レビー小体型認知症」「血管性認知症」とともに3大認知症と呼ばれています。認知症患者の割合は圧倒的に高齢者のほうが多いのですが若い患者もいます。65歳未満で発症した場合は「若年性認知症」と呼ばれます。
高齢化が加速している日本では認知症患者の割合も今後さらに増していくことでしょう。実際、九州大学の二宮教授の研究ではそのような予測が立てられています。研究によると2012年時点では認知症を発症している高齢者の数は462万人で、高齢者の約7人に1人が認知症患者だったのに対し、団塊の世代が75歳以上となり人口の2割近くを高齢者が占めるといわれている2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予想されています。
症状について
認知症には「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つの症状があります。中核症状とは、脳細胞の損傷によって引き起こされる直接的な症状です。記憶障害、判断力の低下、見当識障害、失語、認知力の低下などが含まれます。薬物療法は病気の進行を遅らせることはできますが問題の根本を解決するものではないため、病気そのものを治すことはできません。
中核症状に対して、性格や心理状態、周囲の環境などの影響を受けて起こる二次的な症状が行動・心理症状(BPSD)です。抑うつ、せん妄、介護拒否などさまざまな症状が現れますが、適切な処置やリハビリテーションによって進行を遅らせることができます。