認知症ケアで大切なのはその人の尊厳を守ることです。そのためには相手が何を考え、何をしているのかを知る必要があります。適切なケアをするためにはどのように接すれば良いのか、詳しく解説します。
認知症患者には好んで行う行動と嫌がる行動がある
認知症患者は安心できる場所や人との関わりを積極的に求める傾向があります。いつもと違う場所で過ごしたり、違う人と接したりすることに不安や恐怖を感じるため消極的になったり、パニックになったりします。また、自分ができることは積極的に行いますが、新しいことを覚えたり、できないと否定されたりすることが苦手です。
また、認知症患者は「できること」と「できないこと」の境界線があいまいです。たとえば、運動能力が低下しているにもかかわらず、「以前はできていた」という事実にのみ着目し運動機能が低下していることは認めないため安全を無視した行動をとることがあります。その結果、交通事故の被害者となるケースも少なくありません。
接する際の注意点
認知症患者と接する時は患者が嫌がることを無理にしないように気をつけましょう。やりたくないことを無理にやらせてしまうと周辺症状が悪化する場合があります。また、ペースを乱されたり、孤独を感じる環境にいたり、プライドを傷つけられたりする行為も周辺症状が悪化する原因になるので気をつけなければなりません。
以下に、接し方のポイントをまとめていますので目を通しておいてください。
「孤独を感じさせない環境を作る」
孤独を感じると不安やストレスが強くなるため大声を出したり、暴れたり、あてもなく動き回ったりすることがあります。心穏やかに過ごせるように「知り合いがいてくれる」と思えるような環境作りを心がけましょう。
「急かさない」
ペースが乱れると症状が悪化することがあります。急かしてはいけません。ゆっくりと言葉をかけながら安心して過ごせるように見守ってあげましょう。
「相手のプライドを傷つけない」
認知機能が低下する認知症は人からいわれた言葉などはすぐに忘れてしまいますが、感情の記憶は残ります。認知症患者がもの忘れがありながらも過去の栄光や得意だったことを思い出せるのは、自信やプライドといった感情が心に残っているからです。そのため、怒られることや恥をかくことを嫌う傾向があります。原因そのものはすぐに忘れてしまいますが、怒られた屈辱感はいつまでも残っているのです。そのような気持ちにさせる言葉は避けましょう。
「バリデーション」と「ユマニチュード」とは
認知症患者への接し方として近年注目を集めているのが「バリデーション」と「ユマニチュード」です。バリデーションは患者の感情をもとにコミュニケーションを取る方法で、ユマニチュードは感情だけでなく知覚や言語を用いて対話を行う方法です。